ケイちゃんのいとこの由美子さんの娘が香奈ちゃんだ。香奈ちゃんは16歳だった。初めてあった時、女子高の制服を着ていた。学校帰りで、そのまま牧場に来た。香奈ちゃんは内気な子で、内地から来た自分より二歳年上の母のいとこに会いに来たのだが、自分から声をかけられずにもじもじしていた。


「香奈ちゃん。馬に乗れるの?」

「乗れるべさ!」


香奈ちゃんは、制服のままサラブレッドに歩み寄り、たてがみをつかんでそのまま、ヒラリとまたがった。もちろん、サラブレッドには鞍も手綱もつけていない。ケイちゃんは驚いた。16歳の女子高生が裸馬に飛び乗ったのだ。香奈ちゃんはサラブレッドのたてがみをつかんだまま、競馬の騎手がするように腰を浮かせたままの姿勢で、その辺をギャロップで一周してきた。


ケイちゃんのところまで戻ってくると香奈ちゃんはスカートのまま、ひらりとサラブレッドから飛び降りた。あんまり、鮮やかにやってのけたので、ケイちゃんは拍手した。


「香奈ちゃん。すごいすごい。」


パチパチとケイちゃんが手をたたくと、香奈ちゃんは真っ赤な顔をして照れてお母さんの由美子さんの後ろに隠れた。

(この子はまだ子供なんだなあ。)

自分の方がたった二歳しか年上じゃあないのに、ケイちゃんは香奈ちゃんのしぐさがかわいらしくてほほえましくなった。

「ケイちゃんも乗ってみる❔」

いとこの明夫さんが声をかけてくれたが、ケイちゃんは辞退した。

「いや、無理無理!あたしは乗ったことないから、絶対無理!それにこないだ、仔馬にさわろうとして、母馬におっかけられたから。」



しかし、ケイちゃんの北海道旅行のアルバムにはサラブレッドに乗って疾走する写真が何枚かある。ちょっとからくりがあるのだが、そのネタばらしは、また次の機会にしたいと思う。