ザ・プロレスラー29 鉄の爪フリッツ・フォン・エリック

ブレーン・クロー、ストマック・クロー、ドロップ・キックの名手。AWAチャンピオンにもなっている。来日時はヒール(悪役)としての凄味を演じて見せることに大成功したが、年齢は40歳を越え、母国ではベビーフェイス(善玉)であった。最も、プロレスラーらしい外人レスラーだった。エリックのアイアン・クローを受けてこめかみから、噴水のように流血する馬場さんを見て小学生のボクは驚いた。翌週、学校で山本しょうご君にストマック・クローをかけたら、しょうちゃんは「腹が、こちょびたいが~(こそばゆい)‼」と言ってげらげら笑っていた。

 

力道山の最後の弟子グレート小鹿は米国修業時代の思い出を語っている。

「アメリカのテキサス州ダラスのプロレスラーはエリックのホテルに部屋を与えられ、エリックのレストランで食事をし、エリックのスーパーマーケットで買い物をし、エリックの銀行の小切手でファイトマネーを支払われていた。」

リングネームはフリッツ・フォン・エリック。ベルリン生まれのドイツ人と言うギミック。引退後は全米で最も有名なプロモーター。68歳で亡くなったが、地元でエリック帝国とまで言われた一大経済圏を作った。現役時代、鉄の爪で対戦相手の胃袋やこめかみを、散々わしづかみにした彼は、引退後はアイアンクローで巨万の富をつかみ取った。