若き日のアントニオ猪木

日本人レスラーで、全米サーキット中「トウキョー・トム」と呼ばれたレスラーがいた。彼は、若かったが、ルー・セッズ(テーズ)の秘蔵っ子で長身のキラー・コワルスキーという選手に憧れた。

菜食主義者としても有名なキラー・コワルスキーはもともと技巧派かつストロングスタイルの正当派レスラーであった。仲の良いレスラー仲間のユーコン・エリックと対戦した時、トップロープからのニードロップにより、誤ってエリックの耳をそぎ落としてしまった。その事故以来、肉が食えなくなったというエピソードは、じつは、梶原一騎先生の創作である。プロレス研究家の流智美氏が直接聞いたインタビューによるとダイエットのためだったと言う。

流氏「コワルスキーは、そのエピソードを私(流氏)から聞かされると呵々大笑し、『誰がそんなフェイクを言った?』と笑顔を見せた。」

さて、トウキョー・トムだが、全米デビュー用のスチール写真撮影では大好きなミスター・キラー・コワルスキーを真似たポーズをした。リングネームも『キラー・イノキ』に変えさせた。後のアントニオ猪木のアメリカ修行時代のことである。