ゴールデンウィーク2018・連休の初日にアンパンマンショーを見に行った。暑いのに、ぬいぐるみの中の人たちは大変だ。

ボクらの大学生の時もぬいぐるみショーのアルバイトはあった。ワンステージ二千円だった。週二ステージで四千円。ひと月四週で、八ステージなら一万六千円。皆勤すると、別に五千円の手当が付く。だから土日はすべて出た。

ボクらの時は、ねらい目はショッカー役だった。夏は過ごしやすかった。冬場もアクションが始まると寒くはなかった。
だけど仮面ライダー役は夏場は悲惨だった。暑くて、ヘルメットがでかくて重くて大変だった。初期の仮面ライダーは、異常にヘルメットがでかかったのだ。これでバイト代は同じだったから、バイトのやつらは皆ショッカー役になりたがった。バイト生には人気があった。

ある時、体育大学の新入生がバイトに来た。佐藤君と言った。人の悪いバイトの先輩たちは体育大学生の佐藤君に言った。

「君が主役だ。このメンバーの中で仮面ライダーはたった一人だ。君が主人公で、君が子供たちのヒーローになれるんだ。君は選ばれた正義の人だ。」

佐藤君は感動のあまり、目をウルウルさせていた。

「僕のような新参者が仮面ライダーをやらせてもらっていいのでしょうか?」

「いいとも‼君には適任だ。」


佐藤君のデビューは夏休み中の東京都内のスーパーやデパートのステージを回ると言うものだった。いつもは週二の月八ステージで一万六千円に皆勤手当てで五千円の合計二万一千円が、夏休み中は月二十ステージ、プラス皆勤手当てで四万五千円のバイト代が出た。

しかし、八月のスーパー回りが終わると佐藤君はバイトを辞めた。

「この暑さでとても体がもちません。それに月給四万五千円で、世界の平和を守れても、僕の生活はとても守れません。」