詐欺師たち①

私が自費出版した時、出版社は無断で市立図書館、国立国会図書館に私の本を寄贈した。私は、私の本が不特定多数の人の目に触れることを好まなかった。私家本は、遺書代わりに、家族親戚友人に渡すつもりであった。

内容は私の記憶の中にある「昭和のヒーローたち」であるとか、「自分の失敗談」などと言った他愛のないものであった。


出版社から私家本が自宅に届けられて2週間たった頃、自宅の電話に知らぬ男から連絡があった。某出版会社の者だと名乗った。国立国会図書館で、私の本を手に取って読んだ。随分、感銘を受けたと語った。私は、私の本を読んで感銘を受ける人間が世間にいるとは思えないと言い、要件は何だと訊ねた。

その男は25万円ほど、出せば、一ヶ月後の毎日新聞に私の本の広告記事を載せてやると言った。詐欺だと直感した私は、即座に謝絶し、電話を切った。


友人の漫画家兼編集者に話すと、彼は言った。

 

「詐欺ではないけどそういういかがわしい出版ブローカーがいるわな。25万円はボルなあ。7万円くらいでやれるはずだけど。」

 

そんな輩に自宅に電話をかけて来られるのは、こりごりだ。以来、私は、私家本を出すのはやめた。