11・5新宿伊勢丹前事件と言うと、コアなプロレスファンでなくても、「ああ、あれか。」と、すぐに思い当たる人はいるはずだ。
ボクがその事件の第一報を聞いたのは、後輩の口からだった。
新宿伊勢丹前で、偶然、猪木夫妻と遭遇した数名の外国人レスラーのうちの一人が、猪木に殴りかかって猪木は負傷。
パトカーが出動する騒ぎとなったと言うのが事件のあらましだ。
ボクは、昔、猪木の師匠の力道山が、赤坂のナイトクラブ「ニューラテンクォーター」で、村田勝志に腹を刺され、それがもとで死亡した事件を思い出した。
なにか、とんでもない不条理が、ボクの好きなヒーローたちの身に降りかかってきているように思えたのだ。
赤坂の時も、新宿の時も。
そして、この後、事件は思わぬ方向に動く。猪木は、警察の事情聴取を「興行上のトラブル」としてかわして事件にはしないとプレスに語った。
その後、この騒動の相手を新日本プロレスの興行に参加させた。インド生まれのカナダの実業家で篤志家のレスラーとの試合を各地で興行して回った。
曰く。「借りは、リングの上で返す。」
これは、実は、猪木が仕組んだアングルだった。カナダ人レスラーと猪木の間には遺恨もわだかまりもなかった。その後、長くビジネスパートナーとして新日本プロレスの利潤に貢献した。
カナダ人レスラーの名前は、タイガー・ジェット・シンと言う。
(文中敬称略。ごめんなさい。)