以下はヤフーニュースのコピーです。


“50歳の悪ガキ”鈴木みのる、非情という名の愛情…金曜8時のプロレスコラム

2018年8月17日8時0分  スポーツ報知
  • 垣原賢人(左)に完勝し厳しい言葉を浴びせる鈴木みのる

 “世界一性格の悪い男”から“プロレス王”にキャッチフレーズを進化させた鈴木みのるが、熱すぎる50歳の夏を猛進している。日本最高峰の真夏の祭典「G1クライマックス」を12日の日本武道館まで完走したと思ったら、14日には後楽園ホールで開催された「カッキーライド2018」で暴れた。悪性リンパ腫で闘病中の垣原賢人(46)が一時的にリング復帰する「カッキーライド」のメインイベントで、鈴木は垣原の相手を務めたのだった。

 2006年に頸椎(けいつい)損傷で引退し、14年に悪性リンパ腫で闘病していることを告白した垣原。UWF時代の仲間が15年8月に激励興行「カッキーエイド」を開催し、この時はあいさつするのがやっとだったが、昨年8月に「カッキーライド」とタイトルを前向きなものに替え、第1試合で藤原喜明(69)と着衣のままUWF道場スパーリングマッチを敢行。そして、この年の5月に頸髄完全損傷で首から下が動かなくなった高山善廣(51)の支援を呼びかけた。

 今回の「カッキーライド」では、藤原が冨宅祐輔(49)とUWFマッチを戦い、応援隊長の山崎一夫(55)、安生洋二(51)、桜庭和志(49)らが集結。昨年には前田日明(59)、船木誠勝(49)も参加し、UWFの同窓会となっているが、このムーブメントがそのまま高山支援の動きとなり、鈴木らの尽力で今月31日には、後楽園ホールで高山を支援する「TAKAYAMANIA EMPIRE」が開催されることになった。

 支援される側から支援する側に立ち位置を変えようとする垣原の前に鈴木は立ちはだかったのだ。70キロと細くなりながらも、闘病中とは思えない筋肉質の肉体を披露した垣原。「G1」に出場するほどの現役トップの鈴木に向かって掌底打ちやハイキックを見舞った。

 だが、“プロレス王”は、“プロレスの鬼”でもあった。鈴木は体重の乗らない攻撃に付き合うことはなく、タックルからバックを奪って裸絞め。胴締めスリーパーに移行し、1分50秒、チョークスリーパーで絞め落とした。垣原の長女・綾乃さん(22)、長男・つくしさん(16)が泣きながらリングに上がろうが、鈴木は浪花節を許さない。「おい、垣原。俺は克服しました? だから高山に力を与える? その程度の力で、何を与えるんだよ。お前の大好きなUWF、お前の一部であってすべてではないはずだ。そうだろ?」と憎まれ口をたたき、「プロレスにはこんな方法もあるんだよ」とひれ伏す垣原を起こして場外に蹴り落とし、観客席に投げ飛ばす。止めに入ったつくしさんを蹴り、垣原の背中にパイプイスをぶち込んだ。垣原をリングに戻して、ゴッチ式パイルドライバーの体勢に。持ち上げた所で技を解き、「この続きはとっといてやる。出直して来い」と言い放って去っていった。

 立ち上がった垣原は「情けない姿を見せたけど、鈴木みのるに勝つまであきらめません。だから、高山も絶対にこのトップロープをまたぐまで回復してくれ。絶対にあきらめるな」とあいさつし、リングに集まったUWFの同志と一緒に、高山の決めポーズ「ノーフィアー!」で締めた。

 この輪の中に鈴木はいるはずもない。安生が解説するように言った。「鈴木みのるってぇのはプロだねぇ。Uのリングであそこまで…。カッキー、お前、ホント幸せもんだよ。こんな空気作っといて、鈴木みのる売店行って、今、Tシャツ売ってるらしいぞ。プロ中のプロの仕事だよ」

 この試合のリポートを「鈴木みのる悪性リンパ腫から復帰の垣原を1分50秒で絞め落とし『高山に力を与える? その程度かよ』さらに場外イス攻撃」との見出しで配信した。そのまま読むと鈴木みのるは、何て非道(ひど)い男だ、となるが、これを額面通り受け取るプロレスファンはいない。何という素敵な世界だ。

 (酒井 隆之)