高齢のタクシードライバーの車に乗った時

昨晩、駅前でタクシーに乗った。

痩せた無表情の運転手さんだった。

行く先を告げると、返事をせずに急発進した。

ガクンと身体が揺れて、

(  ボクが、この運転手さんに、何か、気に障ることでも言ったかしら? )

と思ったが、こころあたりはない。

信号がで黄色で速度を上げたり、右折左折では減速しない。

 

ハッとした。

高齢ドライバー。

ボクは、ボクの祖父が転倒して入院して、せんもう状態が始まった時の表情を思い出してしまった。

今、高齢ドライバーの事故が社会現象化して大問題になっている。プロのタクシー運転手さんだって決して例外じゃあない。

タクシー会社は、昨日のような高齢の運転手さんのことを、どう考えているのだろうか?昨日の運転手さんはかなり危ない運手をしていた。経営者サイドは、そのことを知っているのだろうか?

ボクは、昨日の運転手さんのタクシー会社へ電話するかどうか迷いに迷った。ボクが余計なことを言って昨日の運転手さんが高齢を理由に解雇されてしまうのではないか?

もし、そうなれば、罪なことだ。

迷ったけれども、結局ボクはタクシー会社に電話した。誰かが、怪我したり、亡くなったりしてからでは遅い。余計なおせっかいかも知れないがそうなってからでは、ボクは、あの運転手さんの危ない運転を知っていながら見逃して不幸にしてしまうのじゃあないか?

ボクは意を決してタクシー会社に電話した。

 

やはり、昨日の運転手さんは高齢ドライバーだった。年齢を聞いて驚くほどの高齢だった。会社としても、過去、無事故無違反の彼の処遇について迷っているとのことだった。

タクシー会社の人は本人とも話し合い、解雇せずに事務職として再雇用できないか検討してみますと言ってくれた。

 

ボクは、電話してよかったと思った。あの運転手さんが亡くなった祖父のような気がした。