拝啓 ・板垣先生 どうぞ御自愛ください。<もういい!恵介先生。板垣、退(の)くとも、刃牙は死せず!>

 

刃牙道 14 (少年チャンピオン・コミックス)

週刊少年チャンピオンに連載中の『刃牙道』が不定期連載になっているので読者間では、板垣恵介先生の健康不安説が取りざたされていてとても心配だ。

 

もし、本当に板垣先生が健康を害されておられるのなら、休養を取られてもよいのではないか。ストーリーに集中して療養しながら、絵は弟子に任せてもよいのではないか?と思う。

 

30年近く続くこの名作を未完に終わらせてはいけない。もし、中里介山大菩薩峠』のような終焉を迎えたならば、それは日本の格闘技漫画の国家的損失と言えよう。

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ボクはバフル崩壊期の大坂で地方銀行に勤めていた。破綻続きの顧客環境下、無茶なノルマの強制と違法行為すれすれの営業活動を求めてくる上司をぶん殴って会社を辞めてやろうと思いながら毎朝満員電車で出勤していた。

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毎日のことだが辞めてやるという気概は銀行に出勤すると急激にしぼんでしまい、夜は違法な超過勤務で体はボロボロになり終電で帰宅する毎日だった。

 

逃げ場のない閉塞感にさいなまれるボクにある時先輩が、

「とくちゃん。プロレス好きだったよね。この漫画、ジャイアント馬場さんみたいなレスラーが出てくるんやで。」

 

と言って板垣恵介という新人の『グラップラー刃牙』という漫画を貸してくれた。

 

(格闘技漫画なら、梶原一騎先生の作でたくさん読んでるしめずらしくない。)などと思いながら読み始めたら、ぐいぐい引き込まれていった。

柔道一直線1

それまでの定番格闘技漫画の『武力を正義のために使用する』という思想はどこにもなかった。まったく新しいジャンルの格闘技コミックであった。

 

    ☆        ☆      ☆

 あの時から30年近い時が経ってボクは嫌な上司を殴って辞める勇気もなく、だらだらと不毛な銀行員生活を過ごし、少しの一時金を受け取って銀行も辞めてしまった。

しかし、板垣先生の『刃牙』シリーズだけは変わらず読み続けた。つらい時も苦しい時も病気の時も『刃牙』シリーズを読み続けた。

やがて30年近い『刃牙』連載中にボクは老人になってしまったが、作者の板垣先生も、もちろん年齢を重ねられた。

 

30年の間、『刃牙』シリーズはそのクォリティーを高めながら、登場人物たちが生き生きと動き続けた。この漫画の面白さにボクは何度も励まされ勇気づけられ現実の生活を送って来た。

刃牙もオーガも愚地独歩も渋川剛気も花山薫も強烈なオーラを放ちながらボクに元気を与えてくれた。

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作家さんも読者も永遠ではない。老いもするし、終焉もやってくる。悲しいが現実だ。であるとするならば、

もしも、板垣先生。健康に不安があるようでしたら、原作だけに特化して絵の方はお弟子のどなたかに任せては?

ボクは休載があるたびに『刃牙道』の続きより先生の健康のことが心配になる。