劇画の大御所VS演歌の大御所

子連れ狼 1

小池一夫さんの話。
子連れ狼がヒットしてレコード化の話が出てきた。歌手は橋幸夫さん。作曲家は演歌の大御所吉田正さん。
作詞は?作詞はあんただよと言われ小池先生は「へっ!?俺が?めんどくさいなあ。」
 
 
で、数か月後、ホテルで缶詰めになって原稿を書いていた小池先生のとこに電話がかかってくる。
「小池!できたか!!いつまで待たせる。」
「あんた誰?」
「吉田だ!」
小池先生、吉田さんが誰かも、作詞の約束もすっかり忘れていた。
数秒経って思い出した。
(作詞の話約束してた、、、、、。まずい。何も書いてない。)
 
 
そこは、ゴルゴ13の生みの親。ごまかす。
 
「吉田先生。どうもどうも。子連れ狼できてますよ。」
「なら、言ってみろ!!
 
窮する小池。その時、夜。ホテルの窓ガラスを雨が打つ。
雨だれを横目に見て、受話器に向かう小池。
 
「しとしとぴっちゃん。」
「それからっ!!
「しとしとぴっちゃん。しとぴっちゃん。冷たく悲しい雨すだれ。」
「なんか、へんな歌詞だな!?お前、ほんとにできてるのかっ!!
「できてます。清書して今から一時間以内にファックスでお送りしますから。」
 
それから、三十分で書き上げたのがあの名作「子連れ狼」の歌詞である。
 
小池さんは、
(あの爺さん。しとぴっちゃんなんて、どうやって橋幸夫に歌わせるんだ。)と
思ったが完成曲を聞いたら子供のコーラスになっていた。
 
さすが演歌の大御所と感心したそうな。

狼の夜話 俺、劇画、40年

 

吉田正自撰77曲(上)