親友の漫画家からの最後のメール 

昔、一人の中学生がギャグ漫画家に弟子入りするために家出同然でスーツケースに石ノ森先生のマンガ家入門を忍ばせて上京しました。その漫画家の先生は最低でも高校を卒業してから出直して来なさいと言いました。高校卒業後、彼は親を安心させるために大学に入学して授業はたまに出て下宿で漫画ばかり描いていました。そんな時ボクは彼と出会いました。付き合いは50年以上になりますが彼は今春亡くなりました。まだボクは気持ちの整理がついていませんが彼が送って来た最後のメールを読み返しています

 

石ノ森章太郎のマンガ家入門 (秋田文庫)

昨年末は大晦日まで入院していました。新規の抗癌剤治療に対応するための一泊の処置入院の予定が、私の体調の悪化で、一週間も延びてしまったのです。
体調は最悪です。あ、もうダメかも…と思うことが度々になってきました。こうやって人は死を迎えるんだなぁ…などとぼんやり考えます。


病状について医者からは説明されていません。普通なら「延命処置に移行しますか?」なんて訊かれる頃なのでは…と思うのですが。さて、私の命はあとどのくらい持つのでしょうか?
明日からは入院してまた新しい抗癌剤治療です。まだ助かる可能性があるのかな? そうとは思えませんが、信じるしかありません。私のために頑張ってくれている人達がいるのに、私が諦めてはいけないと…。
支えてくれている人達には本当に感謝しかありません。その気持ちに少しでも応えられるように、まだまだ諦めずに踏ん張ります。


それにしても痛いです。モルヒネが効かなくなっています。1ヶ月前の6倍の量を飲んでいるのに、最早その量では苦痛を抑え切れません。


もうダメかな…。そんな言葉が何度も頭を過りました。本能みたいなものでしょうか。
もう少しで返メも打てなくなるような気がします。メールを読むこともできなくなると…。
もちろん自分としては回復を願っています。「ごめん。死に損なっちゃった」というメールが打てることを心底願っています。
でも、ここで何らかのメッセージを残しておかないと、このままお別れになってしまうかも…という不安があるのです。ごめんなさい。そうなることは嫌です。あまりにも不義理でしょう。
だから、区切りとしての私なりのお礼の言葉を御大に残しておきます。


御大、ずっとありがとう。
一緒に長生きの約束は果たせませんでした。申し訳ありません。


これからも御大節を聴かせて欲しいです。スピリッツを全国津々浦々に届けたいですね。


快復すれば、このメールは笑い話。うん、そうなるように努めます。