バブル・デザインのイタリア製のセットアップスーツを知り合いから買い取ったらポケットに紙が丸められて入っていた。引っぱり出したら、なんと、それはドル紙幣だった。21ドルあった。US$は円換算で今二千円くらいか。スーツの持ち主に電話したら
「めんどくさいからあげるよ‼」
と言われた。
それで、銀行に両替に言ったら、ブルゾンちえみによく似たテラーが出て来て、ため口で説明された。
「ああそう。US$を円に替えるのね。」
「両替依頼書を書いてくれる。」
「あ、免許証の提示は要らないから。」
ボクがこのテラーの友達なら分かるが、少なくとも客に言う言葉ではない。
で、15分くらい待たされて、今度は敬語で話しかけられた。
「お客様、申し訳ありません。鑑定機が故障しておりまして復旧までどのくらいかかるか、分りかねますので、お待ちいただくか、日を改めるか、なさっていただけないでしょうか?」
( なんだ。散々待たせた挙句……。)
と思ったが、ボクは血管が普通の人より弱いので怒ったりしないことにしている。
「いいよ。また、来週にするから。」
そうしたら、テラーのブルゾンちえみは、
「お客様。少々お待ちください。」
と言ったので、なんか、ノベルティ・グッズでも持ってくるのかと思ったら、
「どうぞ。」
と言って銀行名入りの使い捨てのホカホカカイロを二個くれた。
(なんだこいつ。)
と思ったが、ボクは、ボクの血管にまあまあと、なだめられて怒るのはやめた。
あのテラーは銀行の窓口でブルゾンちえみの物真似でもやっていた方がよっぽど愛嬌があるぞ。
( え、余計なお世話? やっぱり。 )