甲子園球児の君たちへ!未来の話をしよう

 

 

大甲子園 (1) (少年チャンピオン・コミックス)

 

 

 

若い時に関西のある銀行の支店に勤務した。
顧客宅や取引先の会社を回って預金を集めたり、融資したりする仕事だった。
 
赴任して初めて、得意先の会社の代表者と話していた時、支店長の話になった。
 
「君もこれからは苦労するな。あの支店長の下では、、、、。
彼の自慢話は××年の甲子園大会に出た、こればっかりだ。
ピッチャーだったとか、ヒットを何本打ったとか、じゃない。
高校野球で甲子園に行ったことがある。これしか言わないんだ。」
 
その社長は余程腹に据えかねているのか、延々と支店長の悪口を言った。
まだ、支店長と会話も十分できていない私は、ちょっと変な気がした。
 
 
新任の歓迎会が終わり、支店長と話す機会があったが、果たして彼の人となりはあの社長の話と一致した。
 
それから、支店長と仕事をすることになったが、一言でいうと彼の脳みそは十八歳で停止していた。
 
高校球児だったからきっと根性があるだろうと採用した人事部や、甲子園OBの彼なら支店長が勤まるだろうと推薦した上司にも責任があるが、一番悪いのは本人だ。
 
仕事ができない。部下の指導ができない。顧客にはゴルフとプロ野球と天気の話しかできない。大口顧客と金融監督庁の役人にはもみ手とお愛想笑いで対応する。日経新聞は読まない。愛読紙は大阪スポーツ。自分で何かを考えたり、行動しようとはまるでしない人だった。
 
この支店長は定年で銀行を去る時の送別会でも甲子園を語り、
老いて介護施設に入所してもここで甲子園を語り、
誰にも相手にされなくなってからも甲子園の思い出を独り言していたという。
ここまで徹底していると病的であわれになってくる。
 
 
 
高校球児の君たち!!
 
甲子園体験はもちろん素晴らしい経験だが、大切なことは、甲子園以後だ。
甲子園の経験を活かし、かつ自分の頭で考え、行動しよう。
 
甲子園で燃え尽きてはいけない。
そこから先、何十年という未来が君たちにはある。
甲子園までの十数年より、さらに厳しく、そして輝かしい未来が君たちを待っている。
 
 Sounds of 甲子園球場