一月十八日は海保の日と言うことで上司をぶっ飛ばした話をしよう

海保って海上保安庁のことだ。なんで1月18日が海上保安庁の日かというと電話、ファクシミリの番号が、警察の110番や消防署の119番と同様に緊急性の高い役所と言うことで118番と決められているかららしい。詳しくは知らん。

オールアバウト海上保安庁 増補改訂版 (イカロスMOOK)

なぜ海保の118と上司をぶっ飛ばした話が関係あるかというと田舎の銀行に勤めていた頃のヲタ話になる。

 

ある時融資希望の顧客法人の役員の個人データをファクシミリで保証協会に送信した。ずいぶん昔の話なので今の銀行員には分かるまい。

部下に送信してもらったら彼が

「おかしいなあ。ファックスなのに相手が出て『第六管区海上保安本部です。』というんですよ。」

と言った。

彼は誤送信をしていたのだ。保証協会は当支店では略番で#118と決めていた。彼は#をつけずにそのまま118とキーを叩いたのだ。(決して真似をしてはいけない。虚偽の110番をすれば罰せられるのと同じ。)

 

それからあとは大騒ぎ。仕事なんかそっちのけの大事件。

広島の海上保安庁から電話がかかってきてそちらの銀行の責任者と話がしたいと言う。

支店長は在席していたが逃げ回り支店長代理の私に後は処理しとけと。

 

私は支店長に成りすましで海上保安庁の係官と話し、謝罪をした。

彼が言うには海上保安庁の118番は緊急性の高い番号で人命に係るものだから誤送信は絶対に行けない。保証協会の登録番号を即刻変更してくれ、二度と誤送信のないように。

もう一点は、ファクシミリの内容だがお宅の銀行の取引先の個人に関する情報が多数記録されているようだ。個人情報保護の観点からこれも即刻当方でシュレッダーにかけて破棄する。

私は謝意を告げ電話を切った。あとは支店長に内容を逐一報告した。

 

折しも翌日から個人情報保護法が施行される日であった。

 

支店長はこのことは口外無用である。君も過失責任(部下の監督責任に対する怠慢)も本部には報告しないからと言った。

 

数週間後、全店の支店長会議があって私の仲の良い後輩で小型店舗の支店長になっている男が憤慨して私に電話してきた。

「お宅の支店長は酷い人ですよ。ファクシミリで個人情報漏洩の誤送信したのは先輩で、自分は海上保安庁に随分叱られたが庇ってやった等と皆に吹聴しています。」

 

私は出張から戻ってきた支店長を問い詰めたが彼は「儂は知らん。何も言うとらん。」と逃げの一点張り。

私はブチ切れて支店長の顔面に思い切りパンチを入れてやった。彼は眼鏡が割れて口から血を出し派手にひっくり返った。

 

その瞬間私はこれは暴力事件で傷害罪に問われ懲戒解雇されると思った。住宅ローンもたくさん残っているのに返済不能で家は競売、一家離散、嫁はん激怒の情景が浮かんだ。

 

それらすべてを覚悟したが私に対する処分が常務会で問題になった時、会ったこともない役員が私を庇ってくれたと言うことを後で知らされた。その役員はこう語ったと言う。

 

「悪いのは支店長だ。しかもその支店長代理は部下を庇ってけん責処分を受けたと言うじゃないか。監督責任は本来支店長が負うべきものだ。彼は支店長の身代わりとなって泥を被ったのに酒席の戯言で部下に責任を擦り付け皆に披露した。支店長が悪い。解雇されるべきは支店長だ。殴られて当然!」

 

私は減給処分で済む事となり、のち定年まで勤めた。支店長はと言うと傷害事件として告発するなら退職してからにしろと、くだんの役員に言われ事件にするのを止めたそうだ。雇用は守られたが間もなく関連会社に出向し動物園の切符切りをしているのを見かけたと言う人がいた。私は一時の感情で人を殴りけがをさせたことを反省し今も後悔している。