ケイちゃん十九の夏・北海道

ケイちゃんが北海道のおばちゃんちに行った時、おばちゃんはケイちゃんを車に乗せて、そこら中に連れて行ってくれた。隣近所から始まって、ずいぶんたくさんの友人知人の家を回った。

近所と言っても、一番近い隣の牧場でさえ一キロくらい離れている。「遠い近所」は、時間にして一時間くらい離れている。内地とはスケールが全然違う。

 

そして、行く先々でおばちゃんは、こう言って回った。

「この子は弟の娘で、内地から遊びに来たんさ。まだ、十九だべさ。」

 

ケイちゃんは、おばちゃんは、なせ゛そんなことを言うのだろうと不思議な気がしたが、その理由は次の日の夜に分かった。次の日の夜、おばちゃんの息子の達也さんの友達が十人くらいやって来た。友達は皆こう言っていた。

「内地から嫁っ子が来た。」「達也の嫁っ子が来た。」

 

おばちゃんは世間の人のこういう誤解を恐れていたのだ。ケイちゃんは、まだ十九歳だったのでびっくりした。その気はないけど「北海道にお嫁に行く。」などと言ったら、父も母も腰を抜かしてしまうに違いない。そう考えると思わず、声を出して笑ってしまった。