< ケイちゃんの昼食・17才だった >
家が貧乏で両親は共稼ぎだった。
そのため、ケイちゃんは高校入学後2年間、ずっとお昼は学食のうどんとちくわを食べていた。
殆どのクラスメートが教室で弁当を食べる中、お昼になるとケイちゃんは食堂に移動した。
やがて、クラスメイトの中でケイちゃんのまねをするものが現れた。弁当持参なんかダサい。手ぶらで食堂に行き、食堂のおばちゃんに、ちくわ入りうどんを頼むのがおしゃれということになってしまった。
(うちは貧乏だから毎日うどんなのに、こいつら、バカにしてんのか。)
ケイちゃんはむかついたが、彼女といっしょに行動するクラスメイトはだんだん増えてきた。
そのうち、食堂のおばちゃんからクレームが来た。
「あんたねえ、売り上げに協力してくれて、ありがたいんやけど、下級生たちに言うといてよ。」
「なに? おばちゃん。」
「ほかのクラスの子が、昼前から『ケイちゃん、もう来た?』とか、『ケイちゃん。何時ころ来るの?』とか言うて聞きに来るんや。おばちゃん、一人で、うどんを作ってんのに、あの子ら、じゃまでじゃまで仕方ないやん。」
「え、何なん?それ。うちが悪いん?」
「それでね、きょう、昼前に山本先生が来たから、みんなに注意してもらおうとしたら、あの先生、『おばちゃん。2年のケイちゃんはまだ、うどん食べに来てないかな?』て聞くやんか。あほちゃうんか。生徒の追っかけしてどないすんねん。」
それから、ケイちゃんは、学食でうどんを食べるのはやめて、自分で早起きして弁当持参するようになった。