テレビに出演した大山さんが梶原一騎さんとの出会いを話したことがあった。学生服を着た梶原さんが自然石を抱えて大山さんの事務所に来た。大山さんは道場とも自宅とも言わなかった。事務所と言った。
やって来て梶原さんは、大山さんにその大きな自然石の塊を割ってくれと頼んだそうだ。
大山さんは、
「突然やって来て、大きな石を割れと厚かましいことをいう男だと思ったが、わしに石を渡すと部屋の隅っこで震えながら、わしが石を割ろうとするのを見ていたよ。」
と語った。
その時、震えながら見ていた梶原さんは、後に大山さんのことを「空手バカ一代」に書く。本のタイトルを見た大山さんは「バカ」という言葉に腹が立ったそうだ。
しかし、「空手バカ一代」で大山倍達と極真会館は時流に乗り、超有名になる。格闘技や空手ブームの火付け役となり、社会現象をも巻き起こす。また、梶原一騎さんの実弟真樹日佐夫さんは「ワル」、「タイガーマスク二世」を始めとする多くの劇画原作者、小説家、俳優として有名だが、極真会館の師範代としても名を知られることとなる。
大山倍達さんも、梶原一騎さんも、真樹日佐夫さんも鬼籍に入った。大変残念だ。ボクにとってはみんな、素晴らしい昭和のヒーロー達だった。