アンパンマンショーについては着ぐるみのスタントマンにご苦労さんと言いたい。まず、自分の声でしゃべっての演技ではない。録音された声優の声に合わせてスタントが演技をしていく。時に、МCのお姉さんやバックダンサーが声優を兼ねていたりする。いずれにしても、スタントマンたちは自分で声を出さず、他人のセリフに合わせてアクションをしていく。だから、時としてアクションが遅れたりちぐはぐな動きをしてしまう。

そこで、「ロールパンナ」である。バイキンマンの陰謀によって正義と悪のふたつの心を持つことになった悲劇の妖精。悪の化身となった時は「ブラックロールパンナ」。アンパンマンシリーズのキャラクターの中で唯一武器を使用する。ブラックの目的はただ一つ打倒アンパンマンである。

アンパンマンの戦闘能力ではブラックに太刀打ちできない。アンパンマンはたびたび危機に陥る。彼のピンチを救うのはいつも「メロンパンナ」である。彼女の声にのみブラックパンナは反応する。


と言うようなことを事前知識としてロールパンナの着ぐるみ演技に注目した。言うまでもなく、「ロールパンナ」は女性である。宝塚の男役のような声、言葉遣いでせりふを語るが、「メロンパンナ」の姉である。着ぐるみの中は男性であるらしい。と言うのも「アンパンマン」の着ぐるみよりも背が高い。そして動きが男っぽい。演出ではなく、男らしい。
そのブラックパンナが鞭のような武器を使ってアンパンマンを追い詰める。

アンパンマンの声は戸田恵子の時もあれば、その他の声優さんのときもある。また、司会のお姉さんが司会をしながら子供たちの前でアンパンマンのセリフを言う時もある。だが、「ロールパンナ」の声は宝塚の男役のような声を出す声優が担当している。きっと、他の人にはあの声は出せないのに違いない。まさに、「独占業務」だ。

「ブラック」に変身した「ブラックロールパンナ」の声とやさしい妖精「ロールパンナ」の悪と正義のふたつの心、および、その声を使い分ける声優に感動する。しかし、着ぐるみの中の人の演技にはもっともっと感動する。声に合わせて、アクションだけで悪と正義の演技を使い分けるからだ。


余談ながら、ボクはやなせたかし先生はある有名な戦後の日本のヒーローから、「ロールパンナ」のキャラクターを作り上げたのに違いないと思っている。白覆面、鞭の使用、悪を憎む心等々から連想できる和製ヒーロー。それは、「憎むな、殺すな、許しましょう。」、「月よりの使者」、「正義と真実の人」などの修飾語が良く似合うヒーローだ。
そのキャラクターとは「月光仮面」である。