麻布の歯医者の息子さんが日活の第三の男としてデビューするに当たって会社は演技は素人のこの大学生上がりの青年の脇を個性派で固めることにした。
太陽の男、ナイスガイ石原裕次郎に次ぐ、マイトガイ小林旭に関しては、時の衆議院議長にして脚本書きの原健三郎の無国籍活劇の原作が奏功し大ヒットしていた。
日活宣伝部は、トニーこと赤木圭一郎の周りに驚くべき程の人件費を投じて、スター俳優を配した。
藤村有弘
笹森礼子
トニーが亡くなった時、エースの錠は絶対に犯人じゃないと思った。気障な悪党だけど、いつもどちらがナンバーワンの拳銃使いか、正々堂々の一騎打ちを望んでいたエースの錠は絶対に人殺しじゃないと信じていた。
犯人は以下の三人のうちだれかだと思っていた。
謎の外国人藤村有弘(出所後、ひょうたん島の大統領ドン・ガバチョとなる。)、陰謀を巡らす親分西村晃(のちに反省して水戸黄門となる。)あるいは、だまし討ちの天才金子信雄(服役後、前科を悔いて料理教室を開く。)
その後、エースの錠は「どっきりカメラ」の司会をしたり、芸能人相撲大会で優勝したりした。弟の郷鍈治さんが夭逝した時は義妹のちあきなおみさんに寄り添っていた。
いい俳優でいい人だった。
あの世で、トニーとのんびり映画の話をしてください。合掌。