十五のボクが柔道部で起こした暴力事件(後編)

柔道一直線5

 

 

(前編の要約書)

中学三年で柔道部の主将のボクは二年生の不良柔道部員四人組に手を焼いていた。ある時、四人組のリーダーで的屋の親分の息子港組が、練習後の道場で正座して畳んでいた三年生の新井君の道着を足で踏んづけて謝りもせずに笑いながら出て行った。憤慨したボク港組を注意しようとしたが取り逃がしてしまう。

一週間目に校内で四人組を見かけたボク港組に暴力を振るい、傷つけてしまう。クラス担任で柔道部の顧問の太鼓原は見て見ぬふりをする。生徒指導の教師岩部はボクを呼び出し暴力行為を非難するが、学校は一切無関係として、ボク一人で今日、港組に謝罪に行き、結果を明日報告しろと命令する。

 

 

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  ☆      ☆

 

港組の家、すなわち、的屋港組一家の事務所は狭い町内のことであり、ボクは知っていた。港組の玄関の引き戸を開けるとボクはごめんくださいと声をかけた。はいと声がして港組の父親らしき人が出てきた。想像していたこわもての的屋の親分とは違って、痩せてステテコ姿の胡麻塩頭の老人が現れた。

ボクが、港君はいますかと尋ねると、父親は今、風呂に入っていると答えた。

 

ボクは今日中学で起こった暴力事件について述べ、殴ってすみませんでしたと謝罪した。投げ飛ばしたことは黙っていた。

父親は、「これから、仲良くしてやってくれればいい。」とだけ言った。

ボクは、どうもすみませんでしたと言ってから港組を後にした。謝罪訪問はたったそれだけで終わった。あれだけひどい暴力事件を起こして、ボクは少年院にも行くことなく、両親を呼ばれることもなかった。

その後、港組のグループと学校であっても彼らは、こそこそと姿を隠すだけで、意趣返しを受けるというようなこともなかった。

 

やや拍子抜けの結末だったが、港組を殴ったボクの右手の人差し指と中指の第一関節は熱をもって一週間腫れあがっていた。しかし、殴られたほうはもっと痛いはずだ。打ち所が悪ければ、後遺症が出たりする可能性だってある。それ以来、ボクは人を殴ったりはしていない。

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学校側としては、一つ間違えれば責任問題となり、校長の首が飛びかねないくらいの暴力事件を、中学生であるボク一人に押し付けて終息を図ったつもりだろうが、担任で柔道部顧問の太鼓原や生徒指導の岩部、それらの教師の影に隠れて隠蔽を図ったであろう卑怯な校長や教頭の態度は許し難い。ボクが言えた義理ではないけど。

 

すべては港組の父親の一言によって救われた事件であった。

その後、的屋港組一家は解散して町から消えた。ボクが殴った息子の消息も知らない。