新カラテ地獄変 梶原一騎 中城健 サンケイ出版昭和60年刊~を読む

 

新カラテ地獄変(オリジナル版) 4

●これは「空手バカ一代」の愛読者の少年たちが、成人したり、少年漫画から青年コミックに移行するのをターゲットにして描かれたものでしょう。

中でも今回の9巻「野望の塔」、10巻「英雄達の陰画」、13巻「影の政府」、14巻「革命の羊」は作品中、特に格闘や拷問シークエンスが残虐で本当に梶原一騎さんの原作なのだろうか?実弟真樹日佐夫さんの代筆なんじゃないかと言う噂のあった作品です。破壊主義、破滅主義的な作風からそう言われています。


●破壊主義、破滅主義と言えば、旧聞ながら故人の文豪三島由紀夫さんが戦後アメ横平田弘史さんの破壊主義の劇画(おそらく『血だるま剣法』などの作品。)を探し求めて徘徊したという評論家平岡正明さんの説を思い出します。
しかし、戦後を例えば昭和20年から昭和25年までに限定するとそのエピソードの信ぴょう性がなくなってしまいます。なぜなら東京生まれの平田弘史さんが大阪でデビューしたのは昭和33年。ましてデビュー当時から『血だるま剣法』のような凄まじいタッチの絵は描いていないはずだから、三島由紀夫さんがアメ横平田弘史さんの破壊主義の劇画を探し求め歩いたのは昭和40年代の可能性が高いということになります。

血だるま剣法・おのれらに告ぐ

 事程左様に噂、情報と言うものは過激に誇大に伝わりやすいものなのでしょう。


●話を「新カラテ地獄変」に戻しますが、本編四巻の残酷シークエンスは平田弘史さんの『血だるま剣法』に匹敵するほどのインパクトがあります。そういう印象から本作品の影の作者が真樹日佐夫さんではないかと言う噂が広まったのではないかと思われます。