少年漫画週刊誌の創刊の頃から、物心ついて以来、ずっと漫画を読んで育った世代である。小、中、高、大学とずっと漫画を読んで育った。当時、少年雑誌でギャグ漫画家のトップは赤塚不二夫(1935〜2008)だった。
「秘密のアッコちゃん(1962)」、「おそ松くん(1962)」、「天才バカボン(1967)」は有名だ。もちろん、2015年10月に「おそ松くん」がリメイクされた「おそ松さん」も現在大人気だ。まさに、世代を超えた人気を漫画家であるといえよう。
赤塚不二夫は新潟県出身。戦後満州から引き揚げ、新潟で映画の看板描きをしたあと、上京してトキワ荘に住み漫画家デビューを果たした。そんな赤塚不二夫に関する豊富な資料でマニア垂涎の美術館、赤塚不二夫会館が東京都青梅市にある。
青梅市は知る人ぞ知る映画の町である。電車が青梅の駅に着き、プラットホームに降りると昔風の手描きの映画の看板が目に飛び込んでくる。プラットホームと改札口をつなぐ地下連絡道にも壁には、内外の映画の看板がずらりと並べられている。映画看板での町おこしをしている、というわけだ。
青梅市は赤塚不二夫の生まれ故郷と言うわけではない。特に赤塚と青梅の繋がりはないそうだが、映画の看板描きだった赤塚不二夫をリスペクトし、映画の街を標榜する青梅市の有志が赤塚不二夫会館を誘致したらしい。
無関係な土地とはいえ、こうして昭和を代表するギャグ漫画家の遺品や作品群、関連書籍や写真、あるいは実物画稿をまとめて見ることができる資料館・美術館は貴重だ。展示物は実に見応えがあり、こういった記念館には厳しいネットでの評判も上々だ。
それもそのはず、青梅の街は、通りのそこかしこに懐かしい映画の看板が設置されるだけでなく、街全体が「昭和の街」として作られている。いわば、街全体が昭和レトロ記念館であるところもポイントが高い。街の作りとは無関係に、突然脈略もなく著名作家の記念館などがある観光地などとの大きな違いだ。
しかも、入館料大人450円、子供250円という価格が嬉しい。近くにある「昭和レトロ商品博物館」「昭和幻灯館」も合わせて、赤塚不二夫会館との共通チケット800円で観覧できる。公立の美術館やデパートの企画などでも有名漫画家の特別展が開催されることは多いが、チケット代は1500円ぐらいと案外高い。それを考えれば450円は激安だ。まさに「昭和価格」。
何よりも老いも若きもそこを訪れた人は、必ず「シェーッ!」のポーズで記念撮影をしているからすごい。なんという影響力だろうかと、驚きを超えて感心してしまう。
団塊世代でなくても、漫画好き、映画好き世代でなくても十分楽しめる。夏休み中の学生さんだって行ってみてほしい。今人気の「おそ松さん」グッズの物販もあるから。