手塚治虫先生と石ノ森章太郎先生

リボンの騎士 [少女クラブ カラー完全版]

講談社から出ているリボンの騎士の復刻版は3巻出ていて一昨日一巻だけ読んだが、続きが気になって気になって仕方ない。ついに2,3巻を一気読みした。63年以上昔に完結した少女クラブに連載されたというこの物語は面白さと言う点においては時空を超えている。

往時の物語、それも少女向けのストーリーが、現在、老人のボクが読んでも違和感を感じさせないというのは、漫画の神様・手塚治虫の偉大な力である。

 

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サイボーグ009 1968 DVD-COLLECTION

いったん、その話から逸れるが、先日、石ノ森章太郎さんの『サイボーグ009』を途中から読んだ。と言うのは、秋田書店の都合か単行本の第一巻がこのシリーズの終盤の物語で、少年キングに連載がスタートした当時の誕生編がこの単行本シリーズの五巻目、六巻目に収録されていたのだ。

石ノ森先生の『サイボーグ009』は長期連載でマンネリに陥ってしまったのか、後半のエピソードは難解である。意味がよくわからない部分がある。

知り合いの漫画家兼編集者に打ち明けたら、「 じつは俺もわからん。」と言う答えが返って来た。

ボクの印象では連載開始当時の『サイボーグ009』は漫画界に何か新しいmovementが起こったかのような気がした。面白くて毎週『サイボーグ009』を読むためだけに少年キングを買っていた。しかし、いつの間にか、キングを買わなくなった。そのころから、『サイボーグ009』は難解になっていったのだと思う。

 

第五巻『誕生編』に石ノ森先生があとがきを書いている。

 

「 三十年ほど前、私は新進漫画家としてすでにかなりの作品を描いていた。しかし、悩んでもいた。で、その悩みに決着をつけるため三ヶ月の世界一周旅行に出た。で帰国後

 

サイボーグ009』を書き始めた。

アメリカのグラフ雑誌『LIFE』に未来の宇宙飛行士に関する小文が載っていて『CYBORG』という言葉があった。それがヒントである。

しかし、そんな訳の分からない用語、ヒーローマンガなんて、と方々の雑誌に断られた作品だった。」

 

三ヶ月の休暇後、満を持して描き始めた新境地の新連載漫画だったのだ。面白くないはずがない。

しかし、時とともに連載長期化によってマンネリ化してしまったのかもしれない。

 

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おとなになるのび太たちへ ~人生を変える『ドラえもん』セレクション~

第六巻『誕生編後編』に藤子・F・不二雄先生が「トキワ荘のころ」として、あとがきを書いている。

要約すると、昭和30年夏,高校三年生の石ノ森章太郎トキワ荘にやって来た。「鉄腕アトム」の原稿を手伝うためだった。すでにデビューしていた年上の藤子先生は石ノ森さんの絵と才能に驚愕した。

手塚先生の後を受けて石ノ森さんが手を入れた完成稿が手塚先生の手元に帰って来た。先生はそれをパラパラと見て言った。

「うーむ。丁寧な絵だ。これでは釣り合いが取れないからボクが描いた部分を描きなおそう。」愕然とする編集者。

デビュー前の高校三年生石ノ森章太郎さんが漫画の神様・手塚治虫先生に脅威を与えたのだった。

 

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トキワ荘実録手塚治虫と漫画家たちの青春(小学館文庫)

リボンの騎士の復刻版』3冊と『サイボーグ009の復刻版』2冊を一気読みして漫画の面白さと漫画作家さんたちの人間関係の面白さにも触れたような気がした。